ファッションウィークは後半戦のスタートとなる4日目です。ここまで日中は東京とほぼ変わらないくらいの寒さではあるものの、どんよりとした曇り続き。しかも、ところどころで雨が降り、終日移動しながら取材するにはなかなか過酷な状況です。
この日は〈ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)〉のショーからはじまりました。会場には正方形のランウェーの両脇に観客用のカフェテーブルと木製の椅子を配置。パリの街角のような演出なのですが、そのテーブルと椅子に加えて、床、柱、壁がすべて黒で覆われていました。不穏で重苦しい場の雰囲気を意図的につくり出しているというか。

ショーが幕を開けると現れたのは、視線を下に落とし、疲れ切ったような表情の哀愁漂う紳士たち。それぞれ黒やグレーといった色の、体のラインに沿うシックな装いで身を固めています。
部分的に違う生地を当てたり、パッチワークしたようなテーラードジャケットやチェスターコート、トラウザーがコレクションの輪郭をより明確なものにしていたように感じました。
プレスリリースに明記されたキーワードは「THE BEST, DRESSED」。
コレクションをつくるにあたり、〈リーバイス®️〉〈ステューシー〉〈スピワック〉〈ニードルズ〉〈マムート〉〈トリッカーズ〉〈ハインリッヒディンケラッカー〉〈ニューバランス〉〈ロッキーマウンテン〉〈フォーティーセブン〉に協力を仰いだといいます。






そして、この日は午前の〈ジュンヤ ワタナベ マン〉の発表に続いて、午後は〈コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)〉がショーを行いました。
高まる会場の熱気のなか、〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉は今回もすし詰めの観客を驚かせました。ぼさぼさのヘアにホッケーマスクという、映画の殺人鬼のような強烈な姿です。しかも、原曲が何だか分からないほど引き伸ばされ、歪められた音楽がその不安を煽ります。

ファーストルックは、ドレープの効いたワンピースのような服に、装飾されたラペルが目を引くモーニングコート風のジャケットを合わせた中性的な装い。その後もジャケットは、身頃や袖にシワを入れて歪ませたり、ひだを寄せたり、丈が極端に短かったり、ラペルが無かったり。どれもシルエットはジャストフィットで、メンズテーラードの再考をコンセプトにする〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉ならではの迫力あるデザインです。
34体に及ぶ圧倒的なスタイルを見せたあと、フィナーレには服の色をガラッと変えたモデルたちが登場。そこで流れたのは、フランス人シンガー、ミッシェル・ポルナレフのバラード曲「愛の願い」でした。
このコレクションのテーマは「Let’s get out of the black hole.」。
気になるマスクを手掛けたのは、村山伸。いま、国内外から注目される異色のマスクメーカーです。






続いて紹介するのは〈ディオール(Dior)〉の「Re-See」です。
ジョナサン・アンダーソンによる2回目のメンズコレクションとなった今回は、ポール・ポワレの作品からインスピレーションを得ています。ご存じない方のために説明すると、ポール・ポワレは20世紀前半に活躍したフランス人クチュリエで、それまで当たり前だったコルセットを取り払った服づくりでも有名です。
パリにあるディオール本店のエントランス前に彼の石碑が埋め込まれていることをジョナサンが知り、コレクションのアイデアに取り入れたといいます。
これに加えて、〈ディオール〉のヘリテージへのオマージュや、フォーマルスタイルとカジュアルスタイルの融合など相反するファッションの要素の掛け合わせも見どころです。









昨日のショーの素晴らしさが忘れられず、〈ドリス ヴァン ノッテン〉の「Re-See」にも行きました。間近で服を見るとディテールはもちろん、テキスタイルや柄、シルエットまで、多様なデザインがどれもユニーク。ジュリアン・クロスナーの仕事に驚かされたわけですが、いろいろな要素を咀嚼し、自由に組み合わせてしまうところはジョナサン・アンダーソンしかり、いまのデザイナーに共通しているアイデンティティのように感じました。









